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食卓の崩壊 2008年3月27日
命を結ぶ季節の始まりである。
太陽の賛歌は命を呼び起こそうと大きく手を広げ大空に叫ぶ。
木々は芽吹き生命の歓喜を一斉に謳う。
体を突き抜ける熱が血液を温め生命を燃やす。
雪融け水はせせらぎ、フキノトウが淡い緑で土を彩る。
濡れた土の香りは鼻腔から肺を浄化してくれるようだ。
駆け抜ける突風が新しい季節を連れて来た。
今年初めてのウドを天ぷらにして食べた。
春の味覚は大人になって喜べる味なのかもしれない。
子供の頃空き地に生えていた、フキノトウを山ほど摘んできて母に調理してもらったが
大量に採ってきたことを後悔したのをよく憶えている。
命を摘んだ代償を教えられる・・・・。
共生的自立とでも言うのだろうか。
幼少期の味覚が大人になった時の味覚に影響するらしい。
この様な商売をしているせいか、好き嫌いの話をよく耳にする。
僕自身も嫌いな物があるが、食べられない程ではないし、
人様と食事をする時は何食わぬ顔をして食べている。
押し付けがましいがそれが大人の嗜みだと思っている。
「いただきます」が音になっている。
子供の前で平気で嫌いなものを避け、残す。
箸はまともに持つことが出来ない。
ゲームをしている子供、携帯をいじっている親。
そこには会話は無い。
「命の代償」を実感する機会が減ってきているのではないだろうか?
自分が食べられる分だけを収穫する。
命を摘んでいる実感を教えながら子供と接している人はどれだけいるのだろうか。
僕は食べることが好きで、お酒も大好きである。
特に酒は大好きで毎晩の晩酌は欠かせない。
仕事から疲れて帰っての晩酌は旨い酒を呑みたいと懇願している。
丹精込められた酒は最後の一滴まで心に残る味がある。
愛情を受けずに造られた酒は単純に旨くない。
僕の大好きな酒の杜氏は米と水を熟知し、気候を感じ、
粋を尽くした技術で丁寧に酒を扱い時間を経てより良いものに変わっていく。
酒を造れる事への感謝の気持ちが良い酒になるのだなと感じさせられた。
自分の手で丹精込め作り育て、それを捨ててしまわれる事はとても悲しい。
手作りが減る中で感謝の気持ちが薄くなっている。
食事も酒も人を幸せにする文化だと信じている。
幸せな家庭を築く為にはやはり幸せな食事が大事だと思う。
一つのテーブルを囲み食材の恵みに感謝し作ってくれた人に感謝し
笑顔で食べる食事を守っていきたいと心から思う。

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