Cher Ami 〜 親愛なる友へ 『第2章』
2009年3月19日
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第一章からの続き
私はラフと打ち解ける為に、沢山話し掛けた。
異文化交流第一歩である。
彼は屈託なく笑い、話しをするのが大好きで
一つ聞くと十くらいの答えが返ってくる。
しかしフランス語はおろか英会話もろくに話せないのに
フランス料理店で働く私と、片言の日本語を話すフランス人である。
二人の会話は常に絡み合い縺れ合い、
まるで謎解きの様相を呈するのである。
もちろんこの二人の会話について来られる者などいない。
おそらく聞いているうちに眠たくなるだろう。
ここで断っておきたいのだが、
決して彼が日本語が下手だったわけではない。
他愛のない会話ならば充分通用するくらい日本語はうまかった。
ただ仕事をする上では別問題である。
お客様に伝わらないと仕事にならない。
そして私は、彼に仕事を教えるという任務を背負っている。
彼とコミュニケーションをとることは、
とても大切で重要なことであった。

徐々に私はラフの言わんとすることが
理解できるようになり、仲良くなっていった。
そして彼の話す片言の日本語を皆に通訳できるまで成長した。
もちろんラフも私の言いたい事が
わかるようになっていった。と思う。
徐々に深まる話しの中で、不思議でならなかったのは、
彼は日本人以上に並々ならぬ日本に対する愛国心を持っていたことだ。
なぜとりつかれたように日本が好きでしようがないのか、
本人にもさっぱりわからない様子であった。
ただ子供の頃から日本が好きで、
母国フランスよりも日本を愛して止まなかったようだ。
外国の方と話しをすると、
自分の国をきちんと認識し歴史等を学んだ上で、
母国に愛国心を持っている方が多いと感じる。
そして日本に対しても、
やはり語学の他に歴史や文化を学び
日本に対する愛国心を持とうとしているようだ。
日本人で日本という国に
そんなに愛国心を抱く若者がはたしているだろうか。
以前何かの記事で読んだ事だが、福岡市内にある小学校では
通知表に「国を愛する心情や日本人としての自覚」を
三段階で評価するという項目ができたとあった。
これは社会的な問題となったので
今もその項目があるのかどうかはわからないが、
国を愛する気持ちをどう教えどう評価しようというのか。
ただ「好き」だというシンプルな感情を沸き起こさせる事を
授業で教えなければいけないとは、情けない国、日本である。
私はどうだろう。
やはり日本が好きであった。
なぜだかわからない所はラフと一緒なのだ。
しかし、愛国心とは日本の歴史、文化、政治、
諸外国との関係を踏まえた上で、社会的環境、
家庭環境で育まれていくものではないかと私は思う。

さて、正式にうちのスタッフとなったラフ。
フランス人であるから、きっと本場のマナーを
こちらも学べるはず、と期待を膨らませた。
しかし、彼には大変申し訳ない期待をした。
日本人の誰もが懐石料理を知っているわけではない。
接客業をほとんどしたことのない彼は、
ワインを日本酒のようにグラスになみなみと注いでしまう。
ラフ曰く、フランスの家庭ではグラスに
なみなみとワインを注ぐのが当たり前らしい。
ラフの主観が大きく占めているような気がしないでもない…。
そんな訳で仕事としてのマナーを一から教える必要があった。
しかしながらラフの興味はもっぱら日本語を覚えることにある。
ラフはいつも私に、
「森羅万象てどーゆー意味?」
「ひょう(豹)て漢字でどう書きますか?」
「いなにわうどんって?」
「宮参り?」
と、日本語の質問を矢継ぎ早にしてくるのだ。
「森羅万象」なんて、普段の会話では私だって縁がない。
仕事の台詞はなかなか覚えてくれなかったが
仕事とは全く関係ない言葉や漢字に興味津々。

毎日いろいろな質問の雨霰。
私はいつも、
「その仕事が終わったら説明してあげるから、早く終わらせてね。」
という具合に、飴と鞭という技を使った…
というのは表向きで、彼が仕事をしている最中、
陰で頭を抱えながら辞典とにらめっこである。
私は国語辞典をこっそり持ち歩き、
自分も日本語の勉強をするはめになっていた。
普段使っている日本語をわかりやすく説明するだけでも大変なのに、
説明した単語も通じなければ言い回しを変えなければいけない。
日本人が国語辞典を見ながら説明するのは、やはり格好悪いのである。
ラフが来て、フランス語を学ぶ予定だった私であるが、
なぜだか日本語の勉強に追われる必死な毎日が続くのであった。
こんな日本人魂をもつラフであるが、
時にこれぞフランス人男性であろう言動を垣間見せた。
第三章に続く
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