フィルムズ【第1章】
2008年9月18日
中学・高校生時代は自分の全ての時間を
ハードロックに費やしたといっても過言ではない。
起きてから眠るまで音楽に耳を傾け、
授業中もこっそりと洋楽の訳詩ばかりしていたものだった。
両親も私の情熱に付き合い、一緒に聴いてくれた。
旅行好きな両親は、転勤先で必ずその街の周辺を車で旅行する。
私ももちろん一緒に車に乗っているわけで、
車内では当然のことながら、ハードロックが流れていた。
社会人となってからはもっぱらサザンである。
仕事でこの10数年の間いろいろな所へと連れて行かれたが、
大体の場合、私のボスの車で移動することとなる。
年中サザンである。
何百時間聴いただろう、私はサザンの曲のほとんどを
歌詞を見なくても歌えるくらいにサザンファンとして
成長させられてしまった。
それだけの時間を車で移動したことになる。
家庭環境、仕事環境のおかげで私はおそらく
北海道のほとんどの街を訪れたのではないだろうか。
もう何年前のことだろう。
私は広大な自然を前にとても魅了されたことがあった。
ボスの友人宅に招かれ、スタッフ一同北海道の
ど真ん中に遊びに行った時の事だ。

その家の周辺には見渡す限り大自然が広がり、
あとは真ん中に太い一本道が長く引かれているだけ。
その家に隣家はなく、
向かいに喫茶店を営んでいるらしい家が一軒ある。
家はそれしか見当たらない。
ボスの友人宅はなんともこの地にふさわしい、
ノスタルジックでありロマンチックな佇まいで、
家の外は、「庭」と言うより「森林公園」なのである。
その自然の中に木々が生い茂り、池があり、
五右衛門風呂を造り、犬と猫が戯れ、モモンガまで飛んでくる。
夜になれば満天の星空、自然のことなら何でもありだ。
『北の国から』を見て北海道に憧れを抱いた人なら、
是非この家も観光地に選んで欲しいと思うくらい北海道が詰まっている。
生まれてからのほとんどを北海道で暮らしてきたというのに、
こんなにどっぷりと自然に浸かったことのない私は、
興奮冷めやらず皆次々眠りにつく中、一人眠れずにいた。
そして、夜明け前の一本道を歩き出していた。