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コラムインデックス夕焼け空と緑> 紅茶色のエピローグ


紅茶色のエピローグ
2007年9月29日
秋の空を見上げ目をつぶると、遠い日がよみがえってくる。
学校からJRの駅までの20分位の道のりを1時間以上かけて歩く。

秋は日が暮れるのも早く、
寒いから二人寄り添いながら近くの公園でドキドキしていたわけで・・・・。

そんないまだ忘れぬ中学生の思い出はセピア色で、
心のアルバムベスト10にしっかりと刻まれている。


彼女には2回振られた・・・・。

失恋は少年を男に変える。
あれから15年が経つ。

南円山の片隅で秋の感傷にひたりながら、窓をながめていると1件の電話予約が入った。
8時から4名様。

ふむ、懐かしい声に聞こえた。しかし予約名に覚えがないので感傷にひたり続けていた。
出会いは億千万の胸騒ぎ。

寒くなると、どうしてこんなにも切なくなるのだろうと思いながらテーブルをセットした。
お客様がいらっしゃったのでテーブルにご案内をしていると、後から「市川君!」。

あぁ秋はどうしてこんなにも切ない幻聴を聞かせるのか。
心に刻まれたあの声は僕を幼きあの頃に引き戻す。

振り返るとあの子が何故か手を振っている。 飲みすぎたか・・・。
引きつった顔が我ながら痛々しい。

偶然テレビで僕が出演したのを見て来てくれたらしい。
「なんだよぉー俺彼女いるよーもうおそいよぉー」なんてデレデレしたのもつかの間、
彼女の左手を見て、自分の愚かさに切腹をしたくなった。

全ての謎が解けた。
予約名は彼女の今の姓。
薬指には結婚指輪。

せめて、何か喜ばせられる事はないだろうかと、
思い出を振り返ってみたが店でかけられそうな音楽もない。

モタモタとしているうちに、料理が全て出てしまった。
ああ、無能で甲斐性がない男だ・・・。

落ち込んでいる最中にデザートのオーダーが入った。
せめてサービスでコーヒーでも、と、落としている最中に思い出したことがあった。

デザートを出し、飲み物を持っていったその中に、一つだけの紅茶。

「覚えててくれたんだね。」

セピア色の想い出は一杯の紅茶で素敵に幕を下ろした。



しかし今の彼女はコーヒーも飲めるらしい・・・・。

『タフでなければ生きてはいけない。やさしくなければ生きている資格はない。』