心に想う風景は
偶然に出会う景色とは少し違う。
心に描くその場所に、いつか辿り着いた時
二つの景色は、スローモーションで重なり合い
感動は、より深く、濃く、なるだろう
スローモーション
2008年2月20日
作家 宮本輝さんの「ここに地終わり 海始まる」という著書がある。
実際にポルトガルのロカ岬に刻まれている詩人の詩の一説で、
作者はカモンエス、タイトルは「ウス、ルジーアダス」
ポルトガルでは、今でも教科書で学ぶほどの愛国的叙事詩だ。
物語の原点はそのロカ岬から始まる。
西経9度30分のところにあって、ヨーロッパ最西端の地であるロカ岬。
そのロカ岬から送られた一通の絵葉書が、志穂子という女性を死の淵から救い出す…。
その小説に心動かされ、実際にロカ岬まで旅をした友人がいる。
静かな印象を受けるが、話すと行動力のあるポジティブな女性、Yさん41歳。
32歳の時、何かを模索していた彼女は、
働きながら夜間大学に入学し、英米文化を勉強した。
音楽・絵画・映画・著書…、様々な分野に知識がある。
彼女とは、写真を通して知り合った。
初めて会ってから3年が経つが、
旅先で撮影した彼女の写真を見るのは本当に楽しい。
”大学卒業後に旅をしたポルトガルは、とても素晴らしかった!”
そう語る話に興味を持ち、彼女からその小説を借りて読んでみた。
読み始めると話の進展が気になって、一気に読んでしまった。
読むものに、情景を想像させ、その場に足を運んでみたいと思わせる小説だった。
友人は、宿泊先のホテルからロカ岬まで、
列車とバスを乗り継ぎ、約2時間かけて辿り着いたと言う。
だが、その日のロカ岬は、風もなく波も穏やかだった、とも話してくれた。
人は岐路に立たされて、悩み・苦しんだ時、道なき海を目指したくなる。
そこから道が開ける訳ではないけれど…。
ヨーロッパ最西端の地、ロカ岬に立った時、
彼女の心は達成感でいっぱいだったに違いない。